いささか唐突ですが、風子は自分の夢を思い出しました。

「夢を思い出す」というのもおかしな話かもしれませんけど、思い出したんだから仕方ありません。

どうせ風子のことだからヒトデだろうとお思いでしょう。

惜しい! 非常に惜しいですっ!

確かにヒトデは夢のようなヒトデですが厳密には夢ではありません。海の主です。大海原と書いてヒトデと読みます。

ですが、そもそもヒトデは…………

………………。

…………。

……。

……はっ。

ええと、何の話をしてたんでしたっけ……?

あ、そうでしたっ。風子が自分の夢を思い出した、というお話です。

きっかけは、豆腐部(風子命名、演劇っぽい杏仁豆腐部の略称で、風子も和み担当の部員です)部長である渚さんのお家へ遊びに行った日のことでした。

渚さんとそのお母さん(早苗さんです。おねぇちゃんの友達で今は風子に勉強も教えてくれている優しい人です)が昼食の準備をしている間、風子は渚さんのお父さん(秋生さんです。急に大声を出すので注意しなくてはいけません)と一緒に家の前の公園でキャッチボールをしていました。

「よーし、まずは軽くいくぞ」

「どんとこいです」

秋生さんが風子に向けてボールを投げました。山なりにゆっくり飛んできます。

細かく動いて捕球を試みましたが、そうしている間にもボールはどんどん大きくなって風子を追いかけてきましたっ。

「わーっ!」

怖くなってきたので目をつぶってしまいました。これでは何も見えません。

ですが諦めるにはまだ早いです。ヒトデだって、ちゃんと目が見えません。それでもヒトデは目に頼ることなく海の中を歩きます。目が見えなくても心の目で見る……そう、これが心眼です!

えいっ、と気合い一閃。手のひらを太陽に向けて、その場でジャンプしました。名付けて太陽ジャンプです。ヒトデだってナマコだってウミウシだって、みんなみんな生きているんです友達なんです。

目を開いた風子がグローブを開くと、その中にはボールがしっかりと収まっていました。

「ええぇーーっ!」

自分でもびっくりしてしまいました。風子流ヒトデキャッチ、早くも免許皆伝です!

思わずその場でくるくると回転してポーズを決めるところでしたが、離れたところにいる秋生さんが大声を出しそうな様子だったのですぐにボールを投げ返すことにしました。

「ヒトデシュート!」

バシッと乾いた音を立てて、風子の投げた球が秋生さんの構えるグローブに収まりました。

「なかなかいい球を放るじゃねぇか。野球したことあんのか、風子」

「いえ、したことないです」

自慢じゃないですけど風子、グローブのつけ方もよくわかってませんでした。ボールも思ったより大きいです。

でも、なぜでしょうか。風子は高く飛ぶボールの軌跡を、どこかで見たような気がしていました。

もちろん、テレビで野球中継を見たことは風子もあります。でも実際にしたことは一度もなかったはずです。

不思議な感じでした。

「……はっ!」

その時、風子の身体を激しい稲妻が駆けめぐりました。

これが前世の記憶というものでしょうかっ。風子の脳内に突然、こんな計算式が浮かんできました。

(風子+野球)×ヒトデ=

……プロ野球選手!

目指せ!ベースボールスター

「……というわけで、風子の夢はプロ野球選手にしました」

「それはいいけどさ」

「はい」

「なんで僕のところに来るんだよ……」

ヘン原さん(風子命名、髪の色がヘンな春原さんの略称です)はコタツに足を突っ込みながら、ため息まじりでそう言いました。

風子も荷物を床に下ろしてから正面に座らせてもらいます。

「春原さんは相当ディープな野球マニアだと聞きました」

「誰に」

「岡崎さんです」

「ちっ、余計なこと言いやがって」

ヘン原さんは両手を首の後ろに回して寝転がってしまいました。いわゆる不貞寝というやつです。

普段から風子のことを必要以上に子供扱いするヘン原さんですが、こうして見るとヘン原さんのほうが断然子供です。

「ああん? 誰が子供だって?」

「わっ、なんで風子の言いたいことがわかったんですかっ」

「さっきからめちゃくちゃ口に出してるっての」

これはいけません。またどこからか漏れ出ていたようです。

風子はお口にチャックしました。

…………。

「……それにしても、相変わらず汚い部屋です」

「あんたがその一端を担ってるんですけどね」

ヘン原さんは寝転がったまま片肘をついて横を向くと、棚に置かれた可愛いヒトデたちを指差しました。

「失礼です。風子はこの汚い部屋を少しでも中和しようとヒトデを飾っているんです」

「それにしたって飾りすぎだろ。何個飾る気だよ」

「部屋の汚さが中和されるまでです」

「んな暇あるなら部屋の片づけでもしてくんない?」

「自分で散らかしたものは自分で片づけてください」

「すげぇ正論だけど、君に言われるとなんか腹立つんだよね」

実は風子、今日も可愛いヒトデをひとつ持ってきています。これでまたひとつ、汚さダウン可愛さアップですっ。

部屋を見回して今日のヒトデポジションを探っていると、以前来た時にはここになかったものが目に留まりました。

「いつの間にかテレビがありますっ」

「ああ、それね。夏休み明けに近くのゴミ置き場で拾ってきたんだ。ちゃんと映るんだぜ」

「ではこれから風子と野球ゲームで勝負です!」

「なんでいきなりそうなるんだよっ!」

「こんなこともあろうかと、風子いろいろと持ってきました」

風子は持ってきたヒトデリュックの中から、秋生さんに借りたゲーム機一式を取り出しました。我ながら用意周到です。

「それって単に最初から遊びたかっただけじゃん」

「違います。風子はプロ野球選手になるために野球ゲームをします。イメージトレーニングです」

「はいはい、なんでもいいよ。要するにゲームに付き合えばいいんでしょ?」

「話が早くて助かります」

ヘン原さんは手慣れた様子で端子とアダプターをゲーム機に接続すると、テレビを少し動かしてゲーム機を繋いでいきます。

その間に風子はヒトデリュックの中からゲームソフトを取り出しました。

「よし、セットアップ完了。ゲームソフトは?」

「これにします」

「オーケー。スイッチ、オンっと!」

ノリノリのヘン原さんがスイッチを入れると、タイトル画面がテレビに映し出されました。

妙に軽快な音楽が流れ、画面の中をヘンなキャラクターが左から右に飛んでいきます。

「……って、これ野球ゲームじゃねぇよっ。しかも一人用じゃん!」

「すみません。タイトルにヒトデがついてたので、思わず手に取ってしまいました」

「いや、ヒトデじゃなくて星マークでしょ、それ」

風子はもう一度ヒトデリュックをごそごそやると、違うゲームソフトを取り出しました。

「野球はこれでした」

「ん、まぁ普通の野球ゲームだね。スイッチ、オンっと!」

普通じゃない野球ゲームもあるのか気になりましたが、今度はまさに野球といった感じのタイトル画面がテレビに映し出されました。

テレビの前に正座してコントローラーを握ると、対戦モードを選んでゲームスタートです!

「好きなチーム選びなよ」

正座した風子の隣であぐらをかいているヘン原さんは、野球マニアとしての自信からか余裕ぶっこいています。風子は迷うことなくチームを決めました。

「ではヒトデチームにします」

「だから、それは星だっての……」

続いてヘン原さんがコントローラーを握り、チームを選択します。

「ほんっとにヒトデが好きなんだねぇ」

「それはもちろんです」

「どこをどう間違えたら、んなもん好きになるんだか……」

「どこも間違えてません。風子はごく普通の家庭に生まれて、ごく普通に育ったらこうなったんです」

「でも風子ちゃんはこの町の生まれだろ? 海のそばにでも住んでなきゃ、実物を見る機会なんてほとんどないじゃん」

「風子、ヒトデを飼ってました」

「マジでっ? ……まぁイノシシ飼ってる奴がいるくらいだしな、この町」

喋りながら球場と先発投手を選択し、いよいよ試合開始です!

ヘン原さんが先攻だったので、まずは風子、ピッチャーを操作します。

第一球。カーソルを合わせてボタンを押します。

「ヒトデシュート!」

ゴッ!

痛そうな音がしてバッターが消えました。

「いきなりデッドボールかよ……」

第二球。カーソルをバッターに合わせてボタンを押します。

「フライングヒトデ!」

ゴッ!

痛そうな音がしてバッターが消えました。風子の勝ちです。

「あのさ……やる気あんの?」

「ありまくりです」

「ならいいけど。もうノーアウト一二塁だからね」

「大丈夫です。次は倒します」

「……君、野球のルールわかってる?」

コントローラーを置いて余裕を見せるヘン原さんをよそに、風子は第三球を振りかぶりました。

………………。

…………。

……。

「18点も取りましたっ」

「取られたの、君のほうだからさ……」

長い長い一回表が終わり、風子がバッターを操作する番が回ってきました。

風子がバッターボックスに入ったところで、ヘン原さんの第一球が飛んできました。

ぐふッ!

痛そうな音がして風子のバッターが消えました。

「なかなかやりますっ」

「ていうか今の自ら当たりに行ったよね!?」

「そんなことはありません」

「だったらベース上に立つなよっ!」

風子がバッターボックスだと思っていたところはホームベースでした。なかなか奥が深いです。

それはさておき試合続行。ヘン原さんの第二球です。

「ヒトデスイング!」

風子のバットが空を切りました。

「んー、届かないです」

「それ以前にバット振るの早すぎだからね」

さらに第三球。

「ヒトデスラッシュ!」

バットがまた空を切りました。

「んーっ、ずるいですっ。さっきの遠すぎます。届くわけないですっ」

「明らかにボール球なんだから、振るほうが悪いんだよ。つーか振るの早すぎだから」

はたまた第四球。

「ヒトデ剣・オーロラプラズマ返し!」

バットがまたまた空を切り、風子のバッターが消えました。

「あのさ、もう一回訊くけど……本当にやる気あんの?」

「失礼です。ありまくりです」

「ならいいけどさ……とにかくバット振るの早すぎだからね」

「いいでしょう。もうバッティングのほうはだいたい覚えました」

次のバッターが登場し、風子はコントローラーを構えました。

…………。

短い一回裏が終わり、また風子がピッチャーを操作する番……と思ったのですが、いきなりスコアボードが表示されてタイトル画面に戻ってしまいました。とても不可解です。

「?」

「コールドゲームで試合終了。10点以上差がついてたからね。一応言っとくけど僕の勝ちだから」

「んーーっ!」

風子、まだ諦めてないのに試合終了してしまいました! 安西先生は嘘つきですっ。

「もう一度勝負です!」

「何度やっても無駄だって」

「いえ、勝負は時の運です」

「あのねぇ……そもそも野球のルールぜんぜんわかってないし、さっきだって君の選んだチームのほうが強かったんだぜ。風子ちゃんと僕とじゃ、腕が違うの。リアリィ?」

「ノットリアリィ!」

「日本語で言えよっ!」

「最初に英語使ったのは春原さんですっ」

まさにノットリアリィ、まさかの逆ギレに風子もびっくりです。

「……はぁ、わかったよ。もう一回だけな」

風子の真剣なお願いが通じたのか、ヘン原さんは半ば諦めたようにため息をつきながら承諾してくれました。

「今度はがんばります」

再び対戦モードを選んでチームを決め、ゲームスタートです!

風子、ピッチングのほうもだいたい覚えました。風子の第一球です。

ゴッ!

痛そうな音がしてバッターが消えました。

「だからっ、野球はボールをぶつけるスポーツじゃないっつーの! ドッジボールかよっ!」

「違いますっ! 風子はバッターじゃなくてバットにぶつけようとしてるんですっ!」

『静かにしろやぁっ!』

どぉんっ!

突然すごい音がして、壁が揺れました。

びっくりした風子は思わずコントローラーを放り出して、素早く部屋の隅っこに身を隠しました。

隣を見ると、ヘン原さんが小さくなって震えています。

「どうしましたか」

「しっ」

口に人差し指を当てています。

寒気のようなものが風子の背中を走りました。身の危険を感じます。

さっきの音は何かやばい音だったに違いありません。爆弾でも爆発したんでしょうかっ?

「やべぇ……あいつら、今日は練習休みだったのかよ……」

ズン、ズン、と地響きを立てるような足音が聞こえてきました。

な、何かがこの部屋に近づいてきますっ。

こんな大きい足音は聞いたことがありません。巨人でしょうかっ?

やがて足音が止まると、ばたん!と乱暴にドアが開きました。

「おいっ!」

巨人が現れました! 鬼のような形相ですっ。

風子は後ずさりすると、部屋の隅の壁に背中をはめました。

「……」

横を向くと、部屋の隅で風子と並んで小さくなっているヘン原さんと目が合いました。どう見ても勝ち目はありません。とても頼りないです。

「あ、ああっ! 春原、てめぇその子は……」

巨人が見せた一瞬の隙をついてヘン原さんの手を取ると、風子は文字通り風となって部屋を飛び出しました。

「……はぁっ、はぁっ」

「はぁっ、はぁっ」

すさまじい瞬間風速で部屋を飛び出してしばらく走ったところで、ふたり立ち止まって息をつきます。全速力はさすがに疲れました。

「こうなったら風子、人隠れの術を使います。春原さんは風子についてきてくださいっ」

「お、おうっ」

人隠れの術は人通りの多い場所で有効な術です。人ごみに紛れることで、敵の追撃を振り切ることができるのです。

……って、人が誰もいませんーーーーっ!

失敗ですーーっ!

と思ったら、ちょうど女の人が廊下を通りかかりました。

これはグッドタイミング。風子たちは女の人の背後に潜伏しました。

「ちょ、ちょっとなぁに? あたしに何か用?」

前を歩いていた女の人がいきなり振り返ってしまいましたっ。風子の気配に気づくとは……この女の人、なかなかの使い手です。

しかし声を出しては人ごみに紛れた効果が薄れてしまいます。風子は人差し指を口に当て、女の人に少し静かにしているよう促しました。

「あっ、後ろにいるの春原じゃない。また何か悪さでもしたんじゃないでしょうね……?」

静かにするどころかいきなり疑われてしまいました。しかもなぜか風子まで疑われてますっ。ヘン原さんの信用のなさにはびっくりです。

ヘン原さんも風子に倣って人差し指を口に当て、女の人を必死に説得します。が、やっぱり日頃の行いが良くないからか、ちっとも信じてもらえません。完全に狼少年です。

「見つけたぞっ!」

そうこうしているうちに、巨人に見つかってしまいましたっ!

「……って、こんなん見つかるに決まってるだろ!」

今度はヘン原さんが風子の手を引っ張って走り出しました。

俊敏さには自信がある風子ですが、ヘン原さんのスピードもなかなかのものです。ですが……

「ぜぇ……ぜぇ……」

いかんせんスタミナ不足です。すぐに息が上がり始めました。

「お、追いついたぞ、春原っ」

背後からの声に、ふたり揃ってびくうっ!となりました。とうとう巨人に追いつかれてしまったのです。

「ひぃっ!」

こ、このままではふたりとも食べられてしまいますっ!

……こうなったら仕方ありません。これだけは使いたくなかったのですが……。

臨界点を突破した風子は最終手段に出ました。

人差し指と親指を口にくわえて、大きく息を吹き込みます。

ぴゅーっ!

風子の指笛が周囲に響き渡り、そして……

どどどどどどどーっ!

たくさんの足音が聞こえてきました。

「風子ちゃんを守れーっ!」

風子の最終奥義、ヘンな人軍団召喚です。正直気色悪いのであまり召喚したくないのですが、背に腹は代えられません。

「……って、あれ? 先輩じゃないッスか」

「なんだおまえら? 勢揃いして」

「僕ら、風子ちゃんに呼ばれたんス」

「おお、そうか! そうじゃないかと思ってたんだが、やっぱりこの子が風子さんか!」

ヘンな人軍団と巨人が何やら話してます。

「先輩も風子ちゃんの親衛隊に昨日入ったばかりなんスよ」

ヘンな人軍団のひとりが風子に言いました。この巨人の人はヘンな人軍団のひとりなんですか!? めちゃくちゃやばい軍団ですっ!

「お初にお目にかかりやす。風子親衛隊No.33、加藤っす」

巨人の人はヒトデの形をした名札のようなものを見せて頭を下げました。

聞くところによると、これがヘンな人軍団の隊員証なのだそうです。ヒトデの形は風子的にありです。

「ところで風子さん……その男とはどういったご関係で……?」

巨人の人は風子がその裾を掴んでいるヘン原さんを指差しました。

「僕たち友達だよねっ」

ヘン原さんが今まで見たことのない微笑みを浮かべてます。かなり不気味ですっ。

「ライバルです」

「なんのだよっ!」

「野球です」

風子とヘン原さんの言い合いを聞いていたヘンな人軍団は、なぜかほっとした様子でお互いに顔を合わせて笑い合っています。めちゃくちゃ不気味ですっ!

そして笑顔のままで風子に手を振りながら、ヘンな人たちは去っていきました。

それを見送ったところで、ヘン原さんが息をつきます。

「ふぅ……助かったぁっ。フクロにされるかと思ったよ……」

「袋にされるんですかっ!?」

「まさかラグビー部まで風子ちゃんの親衛隊だったなんてな……君のどこにそんな人を惹きつける魅力があるんだ?」

「風子にもよくわかりません」

「カリスマ性ってやつか? ありえねぇ……」

いきなりヘン原さんが手で頭をぽんぽんしてきました。

「んーっ! もうっ、やめてくださいっ」

風子は身をよじってその手を振り払います。

「そんなことより、帰って試合再開ですっ」

「今度はボールをぶつけんなよ」

「大丈夫です。バットにぶつけます」

「あのゲームにそんな緻密な要素ないっての……」

こうして風子は一日、野球選手を目指して訓練を積みました。

☆☆☆

「今日の風子の夢はプロテニスプレイヤーにしました」

後日。

再びヘン原さんの部屋を訪れた風子の目に、とんでもない光景が飛び込んできました。

「おおっ、待ってたぜ風子さん!」

部屋の中にはヘンな人軍団が所狭しと座っていました。むさ苦しいなんてレベルじゃありません!

ばたん。

風子は見なかったことにしました。

ですが、このままではヘン原さんが袋にされてしまいます。ぺらっぺらになってしまったら大変ですっ。

そこで風子は必死になって一計を案じました。

廊下の突き当たりまで行くと、曲がり角のところで指笛を鳴らします。

すると間もなく、どどどどーっと足音を立てて部屋からヘンな人軍団が飛び出してきました。

「あっちですっ」

風子がなんとなく指差した方向にヘンな人軍団はすごい勢いで行ってしまいました。

「ふぅ……」

緊張を解いて一息ついた後、風子が再び部屋に入ると、ヘン原さんは疲れた様子でぐったりしていました。

「袋になってなくてよかったです」

「なんか言ってる意味が違うような気もするけど……とにかく助かったよ。なんつーかさ、あいつらまるで追っかけみたいだよね」

「!」

その時、風子の身体を激しい稲妻が駆けめぐりました。

これが前世の記憶というものでしょうかっ。風子の脳内に突然、こんな計算式が浮かんできました。

(風子+追っかけ)×ヒトデ=

「風子の夢はアイドル歌手にしましたっ!」

「プロテニスプレイヤーじゃなかったのかよっ!」

――おしまい。

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感想などをお題箱で伝えてくれたら嬉しいです!

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後書き

春風のステップに引き続き、風子と春原の話~。

前回も遊んでばかりのふたりでしたが、今回も遊んでばかりです。風子と春原は遊びに関しては案外相性が良いような気がします。

風子親衛隊は「噂の美少女」だった風子が復学してから再結成された、ということで。1年生を中心にどんどん増員中。

勢い任せの風子と春原の掛け合いがメインですが、笑ってもらえたら嬉しい!