第17回外伝「体育倉庫危機一髪!」

有紀寧
「あ、すごいですね」
杉坂
「いよっしゃああぁぁーーーーっ!」
杉坂
「で、次はどうすればいいの?」
有紀寧
「その状態のまま、スピードノキアヌリーブスノゴトクと三回唱えてください」
杉坂
「スピードノキアヌリーブスノゴトク、スピードノキアヌリーブスノゴトク、スピードノキアヌリーブスノゴトク……」
有紀寧
「はい、いいですね」
有紀寧
「それでは、一緒に閉じこめられたい人の名前を頭の中に思い浮かべてください。そうすれば十円玉が崩れ落ちておまじないは完了です」
杉坂
「よーし」
杉坂
「…………」

体育倉庫危機一髪! 失敗編

杉坂
「……で」
杉坂
「その結果がなぜかコレなわけだが……」
杉坂
「りえちゃんと閉じ込められてドキドキ、だったはずが……」
杉坂
「……はぁ。なんでこんな目に……」
春原
「それはこっちのセリフだよっ!」
杉坂
「う、うわっ!」
春原
「ったく……なんで僕がこんな目に遭わなきゃいけないんだよ……」
杉坂
(しまった……つい口に出してたよ……)
春原
「くそ、扉も開かねぇしよ……」
杉坂
(気まずいなぁ……ああああっ、なんで私あんなことしちゃったんだろ……)
春原
「あのさ、あんたも手伝ってよ」
杉坂
「は、はいっ?」
春原
「僕がこっち引っ張るからさ、あんたはそっち引っ張ってよ」
杉坂
「う、うん。わかった……」
春原
「……はぁっ。ダメだ……びくともしねぇ」
杉坂
「……どうしよう」
春原
「こうなりゃ扉をぶっ壊すしかねぇな」
杉坂
「どうやって?」
春原
「……」
杉坂
「……」
春原
「仕方ないっ。誰か通りがかるのを待つかっ」
春原
「…………」
杉坂
「…………」
杉坂
(沈黙がつらい……)
杉坂
(と、とにかく謝らないと……)
杉坂
「あ、あの……」
春原
「ん? なんだよ」
杉坂
「え……と……その……なんていうか、んと、ええと……」
春原
「あのさ、何が言いたいのかだいたい想像つくけど……そういうのやめにしないか?」
杉坂
「え……」
春原
「あんた今、演劇部手伝ってるでしょ」
杉坂
「う、うん」
春原
「それって罪悪感だけでやってるわけ?」
杉坂
「それは……違う……と思う」
春原
「だったらそれでいいよ。これからも渚ちゃんと仲良くしてくれ。すげぇうれしそうだったからね、渚ちゃん」
杉坂
「あ……うんっ!」
「おーい! 誰かいるのかー?」
春原
「おっ、誰か来たっ。おーいっ! 扉が開かないんだっ! 開けてくれっ!」
「扉か? 開けてほしくば三べん回ってワンと言え」
春原
「よし、わかったっ」
春原
「って、するかっ!」
春原
「てめぇ、岡崎だな……」
「そうだ。おまえを笑いに来た」
春原
「ふざけんなっ! さっさと開けろよ!」
「じゃあな」
春原
「ああっ、待ってくれ! さっきのは冗談だよ、開けてくれ!」
「だったら三べん回って……」
春原
「するかっ!」
「じゃあな」
春原
「ああっ、待ってください!」
杉坂
「……ふふっ」
春原
「なんだよ……」
杉坂
「あ、ごめん。なんだかおもしろいなーって」
春原
「おもしろくねぇよっ」
杉坂
「よーし! じゃあ私もっ」
春原
「へっ?」
杉坂
「こらーっ! さっさと開けろーっ!」
「……え?」
朋也
「なんだ、杉坂もいたのか……。早く言えよ」
春原
「それって僕だけだったら開けないってことですよねぇ……」
朋也
「当たり前だ」
春原
「断言するなよっ!」
朋也
「じゃあ俺は帰るからな」
春原
「待てよっ。僕も行くよ」
杉坂
「あ……」
春原
「じゃあねっ」
杉坂
「あ、はい……。さようなら、春原先輩」
杉坂
「…………」

体育倉庫危機一髪! 成功編

仁科
「……それで」
杉坂
「う……」
仁科
「どうしてこんなことになっちゃってるのかな?」
杉坂
「や……あ、え、を、う……」
仁科
「怒らないからちゃんと話してね。すーちゃん♪」
杉坂
「いや、もう怒ってるでしょ。りえちゃん」
仁科
「…………」
仁科
「怒ってないからちゃんと話してね。すーちゃん♪」
杉坂
「怒ってる……絶対怒ってる……」
仁科
「……」
杉坂
「わかりました……話します……」
仁科
「おまじない?」
杉坂
「うん、体育倉庫にふたりきりで閉じこめられてしまうドラマティックなおまじない」
仁科
「ドラマティックかどうかはともかく、なんで私なの?」
杉坂
「い、いや……なんというか、その……とっさに思い浮かんじゃったもんで」
仁科
「はぁ……しょうがないなぁ」
杉坂
「ごめんね」
仁科
「それで、いつ効果が切れるの? そのおまじない」
杉坂
「……え?」
仁科
「はぁっ……何も聞かずにしちゃったのね……」
杉坂
「い、いやっ、そんなことないよっ。ちゃんと解呪の方法は聞いてきたからっ」
仁科
「解呪って……。やっぱり呪いなんだ……」
杉坂
「えーっと、解呪の方法は……」
有紀寧
『まずはお尻を出してですね……ノロイナンテヘノヘノカッパ、と心の中で三回唱えてください』
杉坂
「嫌だぁぁーーーーーーっ!」
仁科
「わっ、いきなり大きな声出さないでよ」
杉坂
「ご、ごめん……」
仁科
「それで、どうするの?」
杉坂
「りえちゃん、ちょっと後ろ向いててくれる?」
仁科
「別にいいけど……何するの?」
杉坂
(ノロイナンテヘノヘノカッパノロイナンテヘノヘノカッパノロイナンテヘノヘノカッパッ!)
「おーい! 誰かいるのかー?」
仁科
「あっ、誰か来たよっ! すーちゃ……」
杉坂
「え」
仁科
「何してるの……」
杉坂
「い……いやぁ、なんでもないっす」
仁科
「…………」
杉坂
「そ、そんな冷たい目で見ないで~!」
朋也
「何やってんだ、おまえら」
仁科
「あ、岡崎さん」
杉坂
「岡崎先輩だったんすか!」
朋也
「どうかしたのか?」
仁科
「い、いえ……なんでもないです。助かりました」
朋也
「そうか。じゃあ俺は帰るな」
仁科
「あ、はい。ありがとうございました」
杉坂
「ふう……」
仁科
「じゃあ私も行くね」
杉坂
「うん。ごめんね、りえちゃん」
仁科
「気にしないで」
杉坂
「ふぅ……。えらい目にあった……」
杉坂
「おまじない……なんてデンジャラスな遊びなんだ……」
杉坂
「……ん? この壁は……」

To be continued to Clannadry......?